返歌特集

「無職です」に、「君と同じ」と返す — 昼間のアイスをめぐる二句

2026年9月5日

ぴえ子
川柳共感 4
返歌
短歌共感 10

第17回の返歌特集です。今回は、自虐が、そのまま肯定に変わってしまった、あざやかな二句を取り上げます。

きっかけは、ぴえ子さんの**「昼間から/アイス食ってる/無職です」という、自分を笑い飛ばす一句。そこに若き夢見人さんが、まったく同じ上句をくり返しながら、「君と同じ」**と隣に並んでみせる。言葉はほとんど変えずに、意味だけをひっくり返す——読んだあと、ずっとあたたかい気持ちが残りました。

一句目:昼間からアイス、無職です

ぴえ子さんの川柳。

昼間から / アイス食ってる / 無職です

3共感。まずは、清々しいほどの自虐から。

平日の昼間、みんなが働いている時間に、アイスを食べている。そして自分で**「無職です」**と名乗ってしまう。——聞かれてもいないのに、先回りして自分にラベルを貼っているんですよね。

ここに、この句のせつなさがあります。アイスは、本当はおいしいはずなんです。昼間に食べるアイスなんて、最高の贅沢のはず。でも、**「こんな時間にこんなことをしている自分」**という後ろめたさが、その甘さに影を落としている。堂々としているようで、ちょっと肩身が狭い。ぴえ子さんらしい、笑いながら本音がこぼれる一句です。

二句目:君と同じ、理由なんかいらない

そこに、若き夢見人さんが返歌を寄せます。

昼間から / アイス食ってる / 君と同じ / 今を生きるのに / 理由なんかいらない

9共感。——この返し方に、うなりました。

まず、上句をそっくりそのまま繰り返しているんですよね。「昼間から/アイス食ってる」。元句と一字一句おなじ。ところが、続く三文字で、世界が変わります。**「無職です」が、「君と同じ」**に置き換わるんです。

同じ景色を、隣で見ている人がいた。——この瞬間、孤独な自虐が、二人の共有時間に変わる。「わかるよ」でも「気にしなくていいよ」でもない。**「僕も昼間からアイスを食べている」**と、同じ場所に立ってみせる。慰めではなく、並ぶこと。これがいちばん効く返し方だと、あらためて教わりました。

そして下句、「今を生きるのに/理由なんかいらない」。

元句のぴえ子さんは、アイスを食べる理由を説明しようとして、「無職です」と言ってしまったんですよね。若き夢見人さんは、そこを見抜いている。そもそも、理由なんていらない。昼間にアイスを食べるのに、資格も肩書きも要らない。ただ今を生きているだけで十分なんだ、と。

「無職です」から「君と同じ」へ

二句を並べると、変わった言葉はほんのわずかなのがわかります。

  • 元句:昼間から/アイス食ってる/無職です(自分にラベルを貼る/ひとり)
  • 返歌:昼間から/アイス食ってる/君と同じ(ラベルを外して隣に座る/ふたり)

**三文字が入れ替わっただけで、孤独が連帯に変わる。**さらに川柳から短歌へと器が広がることで、言い足りなかった分の言葉——「今を生きるのに理由なんかいらない」——を、ゆっくり付け加える余白まで生まれています。形式が変わることに、ちゃんと意味がある返歌なんですよね。

返歌の力って、こういうところにあるんだと思います。**否定もせず、励ましもせず、ただ同じ言葉を口にして隣に立つ。**それだけで、ひとりぶんだった景色が、ふたりぶんになる。


ぴえ子さん、若き夢見人さん、昼間のアイスを、こんなにあたたかいものにしてくれてありがとうございました。

平日の昼間にアイスを食べても、いいんです。理由も、肩書きも要りません。そのアイスがおいしければ、それでいい。——そう言ってもらえた気がして、なんだかほっとしました。

みなさんにも、つい言い訳したくなってしまうことはありませんか? よかったら、この二句に第三の一句を継いでみてください。「僕も食ってる」という返事、待っています。