秀句ピックアップ

露と、鶴の脚と、朝日と — 三つだけで描かれた秋

2026年9月24日

青嵐
俳句共感 11

露けき芭蕉や/鶴の脚細く/朝日さす

——特集初登場の書き手をご紹介します。青嵐(せいらん)さんです。

ご本人の投稿をたどってみると、驚くことに全句が俳句。しかも、露と蜘蛛の糸を、何度も何度も詠み直している。同じ景色に、繰り返し彫刻刀を入れるような作り方をされる方です。今回はそのなかから、いちばん澄んだ一句を取り上げます。

ここが好き

露けき芭蕉や / 鶴の脚細く / 朝日さす

好きなのは、出てくるものが三つしかないところです。

露に濡れた芭蕉の葉。細い鶴の脚。そして朝日。それだけ。説明も、感情も、一切書かれていません。にもかかわらず、読んだ瞬間に一幅の絵が立ち上がる。

芭蕉(ばしょう)は、あの大きな葉を広げる植物ですね。その広い葉に、朝露がびっしりと置いている。その傍らに、鶴が細い脚で立っている。そこへ、朝日が差し込む。——大きな葉/細い脚/差し込む光。面と、線と、光という、絵画の基本要素だけで構成されているんです。

じっくり味わう

そして、この句の急所は**「細く」**の一語だと思います。

鶴の脚が細い。それはもちろん事実です。でも、この「細く」は、鶴の脚だけにかかっているわけではないんですよね。

朝いちばんの光は、まだ細い。露の粒も、ひとつひとつは小さい。朝という時間そのものが、まだ細い。——**「細く」**という一語が、鶴の脚から、光へ、そして朝の時間全体へと、するすると広がっていく。

逆に、芭蕉の葉は大きくて、露をたっぷり載せている。重たいものと、細いもの。そのあいだに朝日が射して、露が光る。これ以上足すものも、引くものもないバランスです。

同じ景色を、何度も

青嵐さんの他の句を見ていると、この一句が偶然の当たりではないことがよくわかります。

「秋の朝/蜘蛛の糸より/露こぼれ」(10共感)。「秋露おく/蜘蛛の巣銀に/朝日さす」(11共感)。「秋露かな/蜘蛛の糸より/玉落ちて/地にそっと/夏の名残かな」。——露が、糸を伝って、落ちる。その一瞬を、角度を変えながら、何度も詠み直している。

これ、とても俳句的な態度なんですよね。目新しい題材を探しにいくのではなく、ひとつの景色の前にとどまって、見え方が変わるまで見続ける。だから、どの句も静かなのに、少しずつ違う光り方をしている。

ほかにも**「秋朝や/鏡の奥の/父の櫛」「銀杏散る/石畳に/音もなし」「秋暮れて/雀の群れや/電線へ」**——音のないもの、残されたものに目が向くのも、この方の特徴のようです。

まとめ

余計なものが、何ひとつない。ただ見たままを、必要な言葉だけで置く。それでいて、読み終えたあとに、朝のひんやりした空気まで残る。——こういう句に出会えるのが、このお題箱をやっていていちばん嬉しい瞬間です。

青嵐さん、はじめまして。素敵な一句をありがとうございました。これからの投稿も、楽しみにしています。

みなさんは、今朝いちばんに目に入ったものを覚えていますか? よかったらコメントや返歌で、教えてください。