迷ったら 楽しいほうへ 舵を切る
——九月がはじまりました。新しい季節のはじめに、この一句を置かせてください。
通りすがりの凡人さんの川柳。迷ったときの決め方を、たった十七音で言い切ってしまう。読んだ瞬間に背中がすっと軽くなる、気持ちのいい一句です。
ここが好き
迷ったら 楽しいほうへ 舵を切る
好きなのは、**「楽しいほうへ」**という基準です。
迷ったとき、私たちはたいてい別のものさしを使いますよね。「正しいほう」「損をしないほう」「怒られないほう」「無難なほう」。どれも大事ではあるけれど、選び終わったあとに、あまり自分が残らない。
通りすがりさんの答えは、そのどれでもありません。楽しいほう。——自分がどう感じるかを、判断の中心に置いているんです。しかも「楽なほう」ではないのがミソですよね。楽と楽しいは、まるで違う。楽しいほうは、しんどくても、面倒でも、心が動くほう。だから、この句はぐうたらの言い訳ではなく、ちゃんと前を向いた選択の話なんです。
じっくり味わう
そして、**「舵を切る」**という言葉。
「楽しいほうを選ぶ」でも「楽しいほうへ行く」でもなく、舵を切る。——この航海のイメージが、この句を一段深くしています。
舵を切るのは、自分の手です。流されるのでも、誰かに連れて行ってもらうのでもない。自分の船の進路を、自分で変える。しかも舵は、切ってすぐには曲がりません。大きな船ほど、じわじわと向きを変えていく。つまりこの句は、「今すぐ全部変えろ」とは言っていないんですよね。ただ、進む先をほんの少し、楽しいほうへ向け直す。それだけでいい、と。
決断を、劇的な事件ではなく、静かな操作として描いている。だから押しつけがましくなくて、素直に受け取れるんです。
迷っている人へ
この句のやさしさは、「迷ったら」から始まるところにもあります。
迷うことを、否定していないんですよね。**迷ってもいい。決められなくてもいい。**そのうえで、どうしても決めなきゃいけなくなったら——そのときは、楽しいほうへ。迷っている状態を責めずに、そっと選び方だけを手渡してくれる。
通りすがりの凡人さんは、**「元気ない そんな日は無理 しなくてよし」「『またね』とは 終わりじゃなくて 約束さ」**など、読む人の背中をさすってくれる句をたくさん届けてくださっている書き手です。今回の一句も、まさにその系譜。説教でも精神論でもなく、隣に座って言ってくれるひとこと、という感じがします。
まとめ
九月です。新しいことを始める人も、迷いの真ん中にいる人もいると思います。そんなときに、**「楽しいほうへ舵を切る」**という物差しをひとつ持っておく。それだけで、選ぶことが少し軽くなる気がします。
通りすがりの凡人さん、いつも素敵な一句をありがとうございました。
みなさんは今、何かに迷っていますか? そして、あなたの「楽しいほう」はどっちでしょう。よかったらコメントや返歌で、聞かせてください。