気づけば、もう六月。夏が、すぐそこまで来ています。
そんな季節の入り口にぴったりの一句をご紹介します。なごみRさんの俳句、じっくり味わってみましょう。
ここが好き
朝露の / 香りかぐわし / 夏近し
たった十七音なのに、読み終えたあと、本当にそこに朝の匂いが残っている。そんな一句です。
まず**「朝露の」。露そのものは無色透明で、本来は香りなんて持たないはずですよね。それなのに、この句はいきなり「朝露の/香り」**と置く。見えるはずのないものを、嗅覚で捉え直したんです。
ここがまず、いい。
じっくり味わう
中七の**「香りかぐわし」**。
「かぐわし」って、最近ほとんど使われないことばですよね。「いい匂い」と言ってしまえば終わるところを、**あえて古語の「かぐわし」**を立てている。これがこの句の生命線です。
「かぐわし」には、ただの香りじゃなくて**「香りそのものが美しい」**というニュアンスがある。匂いに美意識が宿る言葉なんですよね。朝、葉先に残った露が、葉や土や青草の匂いをまとって立ち上がってくる——その総体を、たった四音で抱きとめてしまった。
そして座五の**「夏近し」**。
これがまた、絶妙な距離感なんです。「夏来たる」でも「夏立ちぬ」でもなく、「夏近し」。まだ来ていない、でももうすぐ来る。夏の予感だけが、朝露の香りに先回りしている——そんな初夏一歩手前の景色が、ぴたっとはまる結びでした。
季節を、香りで呼ぶ
俳句って、つい「目に見えるもの」を詠みがちじゃないですか。新緑とか、青空とか、光とか。
でもこの句は、夏の到来を「香り」で捉えている。視覚じゃなくて嗅覚で季節を測っている。これがすごく現代的で、同時にすごく原初的でもあるんですよね。
考えてみれば、人間が季節を最初に感じるのって、たいてい匂いからだったりします。雨の前の土の匂い、夏の夕方のアスファルトの匂い、秋の朝のひんやりした空気——五感のなかでも、嗅覚はいちばん季節と結びついている。
なごみRさんは、その**「匂いで季節を察知する身体感覚」**を、たった十七音で句にしてしまいました。
まとめ
朝、家を出たとき、ふっと**「あれ、夏の匂いがする」**と感じる瞬間ってありますよね。この句は、そのほんの一秒を確実に捉えています。
なごみRさん、季節の節目にぴったりの一句をありがとうございます。
みなさんはこの六月、どんな匂いで夏の気配を感じましたか? よかったら、コメントでも、返歌でも、教えてください。