秀句ピックアップ

その手の中で、何が光っているのか — 知りたい、と思ってしまう

2026年9月17日

短歌共感 10

前のめる君の手の中光る文字/何を語るか知りたいと思ふ

——こんなに現代的なのに、こんなに古風な一首は、なかなかありません。

hijiriさんの短歌。前のめりになってスマホを覗き込んでいる「君」。その手の中で光っている文字を、自分も知りたいと思ってしまう。スマホという最新の道具と、「思ふ」という文語が、ひとつの歌のなかで静かに握手しています。

ここが好き

前のめる君の手の中光る文字 / 何を語るか知りたいと思ふ

好きなのは、**「前のめる」**という書き出しです。

スマホを見ている人の姿って、たしかに前のめりなんですよね。背中を丸めて、首を落として、画面に吸い込まれていく。その姿勢を、たった三文字で捉えている。しかも**「前のめる」**という動詞のかたちが、ぐっと引き込まれていく動きそのものになっている。

そして、その前のめりの先にあるのが**「手の中光る文字」**。——顔でも、目でもなく、手の中の光に焦点が合っているんです。君を見ているようで、君が見ているものを見ようとしている。この視線のずれ方が、絶妙に切ない。

じっくり味わう

そして下の句、「何を語るか知りたいと思ふ」。

この歌がうまいのは、**「何を見ているのか」ではなく「何を語るか」**と書いたところなんですよね。

画面の文字が「語っている」——つまり、その向こうには誰かがいる。ただの情報ではなく、誰かの言葉を読んでいる。だから知りたくなってしまう。君の心を動かしているのは、誰の言葉なのか。

……これ、ほとんど嫉妬です(笑)。でも、そう書かないんですよね。ただ**「知りたいと思ふ」**とだけ言う。責めもせず、覗き込みもせず、ただ静かに思っている。この節度が、この一首を上品にしています。

「思ふ」で、締める

いちばん唸ったのは、**結びの「思ふ」**です。

「知りたい」で終わってもよかったはずなんです。そのほうが直接的で、気持ちも強く出る。でもhijiriさんは、そこに**「と思ふ」**という古い言い方を添えた。

「思ふ」が入ると、感情がワンクッション置かれるんですよね。「知りたい」という気持ちを、自分で少し離れたところから眺めている感じ。しかも文語なので、どこか和歌の時代の恋の作法みたいな響きが生まれる。

スマホの光という、これ以上ない現代の風景。そこに、千年前から続く「人の心を知りたい」という願いが重なる。道具は変わっても、誰かの心を覗き込みたい気持ちは変わらない——そんなことまで言われた気がしました。

まとめ

hijiriさんは、先週の**「夏の忘れ物」の振り返りで初登場したばかりの書き手です(「大輪か小さな花か/夜の火を/君と一緒に見上げたかった」)。あのときも今回も、現代の風景を、少し古風な言葉づかいで包むのがとても上手で、そのせいで感情が直接ぶつかってこない**——だから、かえって長く残るんですよね。

hijiriさん、素敵な一首をありがとうございました。これからの投稿も楽しみにしています。

みなさんは、大切な人が夢中で見ている画面の中身、気になったことはありませんか? よかったらコメントや返歌で、教えてください。