第13回の返歌特集です。今回は、ちょっと特別な回。ひとつの元句に、ふたつの返歌が寄せられた、めずらしいやりとりを取り上げます。
きっかけは、「またね」という、たった一言の別れの言葉。通りすがりの凡人さんが「それは終わりじゃなく、約束だ」と詠んだ元句に、川石のりたけさんが「過去へ」、なごみRさんが**「来世へ」**、まったく別の方向から応えました。同じ「また会おう」が、二本の道に分かれていく——読んでいて、胸がいっぱいになる三句でした。
元句:「またね」は、約束
通りすがりの凡人さんの川柳。
「またね」とは 終わりじゃなくて 約束さ
12共感。何気なく交わす、あの**「またね」。別れ際の、ごく軽い一言ですよね。でも通りすがりさんは、そこに立ち止まる。「またね」は、別れの言葉じゃない。"また会おう"という、小さな約束なんだ**——と。言われてみれば、その通りなんです。「さようなら」とは違う。「またね」には、次がある。当たり前に使っていた言葉の、あたたかい正体を、そっと教えてくれる一句です。この呼びかけに、二人が応えます。
返歌A:過去へ — 川石のりたけさんの川柳
埋めたあの日の / タイムカプセル
12共感。まず、川石のりたけさんは、「またね」の約束を過去へ向けます。
タイムカプセル——子どものころ、校庭や庭に埋めた、あれ。「何年後かに、みんなで掘り起こそうね」と約束して、埋めた宝物。まさに、「またね」を、かたちにして地面に埋めたようなものですよね。あの日の「またね」は、いまも土の中で、掘り起こされる日を待っている。過去に交わした約束が、未来の再会を約束している。元句の「約束」を、時を越えて実在するものに変えてみせた、みごとな返しです。
返歌B:来世へ — なごみRさんの川柳
生まれ変わっても / また会えるから
11共感。もう一人、なごみRさんは、同じ「またね」を、はるか来世へ向けます。
「生まれ変わっても/また会えるから」——こちらは、いちばん遠い約束です。今生だけじゃない。次に生まれ変わっても、きっとまた会える。だから「またね」なんだ、と。切ないような、でも、どこまでも信じているような。別れを、永遠のスケールで包み込んでしまう一句です。川石さんが「過去」から約束を掘り起こしたのに対して、なごみRさんは「来世」まで約束を延ばした。同じ言葉が、正反対の時間へ飛んでいく。
過去と来世、その真ん中に
三句を並べて、あらためて驚きます。
- 元句:「またね」は約束だ(=いま、ここでの発見)
- 返歌A:埋めたタイムカプセル(=過去に埋めた約束)
- 返歌B:生まれ変わっても(=来世まで続く約束)
通りすがりさんが**「いま」放った一言が、川石さんによって過去へ、なごみRさんによって未来(来世)へと引き伸ばされ、「またね」という言葉が、時間の全方向へ広がっていく**。ひとつの呼びかけに、こんなにスケールの違う二つの答えが返ってくる。返歌の面白さが、これ以上ないくらい詰まった三句でした。同じお別れの言葉でも、受け取る人によって、その約束はどこまでも遠くへ行ける。
通りすがりの凡人さん、川石のりたけさん、なごみRさん、ひとつの「またね」を、こんなに豊かに広げてくれてありがとうございました。
「またね」と手を振るとき、私たちは無意識に、次に会う日を約束しているのかもしれません。過去のあの日にも、遠い来世にも、その約束は続いている——そう思うと、別れが少し、あたたかくなります。
みなさんにとっての**「またね」は、どこへ続いていますか? よかったら、この三句にあなたの返歌**を継いでみてください。