週末締めのお題**「秋分の日」**が終わりました。10句の投稿、ありがとうございました! 自由詩4・俳句3・川柳2・短歌1という内訳です。
秋分の日は、昼と夜の長さが等しくなる日。——この「等しい」という言葉が、どうやらみなさんのスイッチを押したようです。10句のうち、なんと9句が「昼と夜」あるいは「等しさ」に触れている。そして面白いのが、そこから自分のほうを測りはじめるんですよね。給与も等しく、心も半分ずつ、誰もが等しく疲れている。今回は5句をご紹介します。
①昼間でも、影が伸びる — 日常生活さんの俳句
昼間でも / 影が伸びてる / 秋分の日
5共感でトップ。日常生活さんの俳句。
まずは、体で感じた秋分から。
夏のあいだ、真昼の影は足元に短く縮んでいました。ところが秋分のころになると、昼間でも影が長くなっている。太陽の高度が下がったからですね。
**「昼間でも」**の「でも」に、はっとした感じがありますよね。夕方ならわかる。でも、いまは昼間なのに。——理科の知識ではなく、地面を見て気づいたという順番がいいんです。暦の上の秋分ではなく、自分の影で確かめた秋分。この特集の入口に、ふさわしい一句でした。
②昼と夜が同じなら、係長も — 万年係長さんの川柳
昼と夜が / 同じ長さなら / 係長も
5共感。万年係長さんの川柳。
——昨日ご紹介したばかりの書き手が、こんなところにもいました(笑)。
「昼と夜が同じ長さなら」。自然界が平等になるこの日、「係長も」。……そのあとが書かれていないんですよね。
係長も、部長と同じ扱いになるはずだ。係長も、いつか昇進するはずだ。係長も、少しは報われていいはずだ。——何を言いたいのかは、読者が補うしかない。そして、どう補っても切ない(笑)。
「〜も」で言い切って黙るというのが、この句の技です。天体の平等を引き合いに出して、職場の不平等をそっと訴える。自然の摂理と会社の人事を並べてしまう大胆さ。万年係長さんらしい、笑って泣ける一句です。
③終電で、誰もが等しく疲れている — 市井の詩人さんの自由詩
昼と夜が/同じ長さで/握手する夜/終電の中で/誰もが等しく疲れている
市井の詩人さんの自由詩。
こちらは、等しさを人間のほうに引き寄せた一篇。
まず**「昼と夜が/同じ長さで/握手する夜」。——この「握手する」**が素敵ですよね。昼と夜が、対立するのではなく、年に二度だけ対等な相手として手を握る。季節の儀式みたいです。
そして視線が、車内に降りてきます。「終電の中で/誰もが等しく疲れている」。——この日いちばん平等だったのは、昼と夜ではなく、乗客の疲労だった(笑)。役職も年収も違う人たちが、終電の座席で、まったく等しい顔でうつむいている。
天体の平等が、疲労の平等に着地する。②の「係長も」が求めていた平等が、皮肉なかたちで、ここで実現しているのが可笑しくて、少し悲しい一篇でした。
④半分疲れ、半分愛おしき — 名無しの詠み人さんの短歌
秋分の日 / 昼と夜等し / 我が心も / 半分疲れ / 半分愛おしき
名無しの詠み人さんの短歌。
そして、心を半分に割ってみせた一首。
昼と夜が等しいのなら、自分の心も半分ずつなのかもしれない。半分は疲れている。でも半分は、愛おしいと思っている。
いいのは、どちらかに決めていないところです。「疲れたけど頑張る」でも「つらいけど幸せ」でもない。ちょうど半分ずつ、混ざらずに同居している。——実際、私たちの気持ちってそうですよね。仕事も、家族も、生活も、疲れと愛おしさが半々。それを、秋分という「等分の日」に重ねて測ってみせた。
天体の等分が、感情の等分になる。お題の使い方として、いちばん美しい一首だったと思います。
⑤平等に分けようとして、徹夜 — 名無しの詠み人さんの自由詩
昼と夜が/同じ長さって聞いて/スマホの画面時間も/平等に分けようとした/—結果、徹夜
最後は、同じく名無しの詠み人さんの自由詩。締めは、この一篇で(笑)。
昼と夜が同じ長さだと聞いた。じゃあ、スマホの画面時間も昼と夜で平等に分けよう——という、謎の思いつき。
そして結果、「—結果、徹夜」。
夜の分を稼ごうとして、夜をまるごと使ってしまったわけですね(笑)。平等にしようとした結果、いちばん不健康な不平等が生まれる。ダッシュのあとに置かれた「結果、徹夜」の、身も蓋もない着地が最高です。
①〜④が真面目に「等しさ」を測っていたところに、この一篇が来ると、全部まとめて笑いに変えてくれる。10句を締めくくるのに、ぴったりの一撃でした。
まとめ
昼間でも伸びる影(日常生活)/係長も(万年係長)/終電の等しい疲労(市井)/半分疲れ半分愛おしき(名無しの詠み人)/平等に分けて徹夜(名無しの詠み人)——10句から拾った、五つの秋分。
ほかにも、「昼と夜/等しき息で/走り抜く」という力強い一句、「昼と夜が/等しく手を結ぶ夕暮れ/誰もが少しだけ/影の側に立つ日」——この**「誰もが少しだけ影の側に立つ日」という一行も、忘れがたい表現でした。そして「秋分の日/昼と夜等し/猫も知る/窓辺の日差し/短くなった」**と、猫まで秋分を知っているという一句も。
昼と夜が同じ長さ、というただの天文現象。それを聞いて、みんなが自分の心や給与や疲労を測りはじめる——お題ひとつで、こんなに内側を向くとは思いませんでした。
参加してくださったみなさん、ありがとうございました。あなたの「半分」は、いま何と何でできていますか? よかったら、コメントで教えてください。