五月いっぱい走り続けた月締めお題**「風薫る」。ふたを開けてみたら26句**もの投稿が集まりました。みなさん、ありがとうございます!
「風薫る」って、いざ詠もうとすると意外と難しい季語じゃないですか。香りそのものは見えないし、風そのものも見えない。でも、みなさんの句を並べてみたら、それぞれが**「風薫る」の見えない正体**を、それぞれの角度から捉えていて、本当におもしろい眺めでした。
今回はジャンルごとに5句、ピックアップしてご紹介します。
川柳 — 仲直りの空き地に吹く風
ケンカ後に / いつもの空き地 / 風薫る
川石のりたけさんの川柳。13共感でこのお題のトップ。
「風薫る」の何が嬉しいって、この句は風そのものを描いていないんですよね。描かれているのはケンカ後の二人。それなのに、最後の「風薫る」で、ふっと沈黙の隙間に新緑の匂いが入り込んでくる。
仲直りの直前って、たいてい言葉が出てこないじゃないですか。その何も言えない数秒を、風薫るが代わりに埋めてくれる。自然が人間関係を仲裁してくれるような優しさが、この一句にはあります。
ケンカしたまま、いつもの空き地に集まれる関係——それ自体がもう、すでに仲直り済みなのかもしれません。
俳句 — 身体が伸びる、ひと呼吸
風薫る / うんと背伸ばし / 深呼吸
なごみRさんの俳句。11共感。
これ、読んだ瞬間に自分まで背伸びしたくなるんですよね。「うんと」という副詞がいい。「思いきり」でも「ぐっと」でもなく、「うんと」。
口語の柔らかさのなかに、身体ぜんたいが一回り大きくなる感じが入ってる。風薫るっていう外側の季節に応答するように、自分の身体も季節へ向けて開いていく。身体感覚で詠む俳人としてのなごみRさんの真骨頂です。
自由詩 — 風が運んでくる、誰かの名前
風薫る昼間に / 君の名前を / 三度つぶやいてしまった / 窓辺で
若き夢見人さんの自由詩。9共感。
「三度つぶやいてしまった」——この「しまった」が効くんです。
一度目はうっかり、二度目は確かめるように、三度目は……たぶん、もう自分でもどうしようもなくて。風が窓辺に届くたびに、相手の名前がするっと口から漏れていく。意志ではなく、風が呼ばせているような不可解さ。
風薫るという季語の透明感と、人を想ってしまう抑えきれなさが、ぴったり重なる一篇でした。自由詩だからこそ書けた、独白の素直さです。
短歌 — 山路の夕暮れに、優しきひかり
風薫る / 夕暮れ山路 / 母を待つ / 柴折る音も / 優しきひかり
名無しの詠み人さんの短歌。5共感。
「柴折る音も/優しきひかり」——音が、ひかりになっている。共感覚的な結句にしばらく言葉を失いました。
風薫る山路で、母を待っている。遠くで枝を折る音がする。その音までもが、もうひかりに思えてしまう。待つ時間の濃さが、世界をすこし違う風に見せているんですよね。
短歌の三十一音だからこそ持てる、時間の余白がよく出た一首でした。
俳句 — 孫の手と、畑への一歩
風薫る / 孫の手引いて / 畑へゆく
気ままにさんの俳句。4共感。
気ままにさんといえばお孫さんの句、というくらいおなじみのモチーフですが、今回もまた、じんわり温かい一句。
**「孫の手引いて」って、たった六音なんですけど、ここに「次の世代に風を渡す」**みたいな大きな物語が、しれっと収まってる。風薫る五月の畑へ、小さい手と大きい手が並んで歩いていく。
季節の入り口を、世代を超えて一緒に歩く——そんな景色を、力みなく差し出してくれました。
まとめ
仲直りの空き地、背伸びの深呼吸、三度の名前、夕暮れの山路、孫の手——並べてみると、「風薫る」はそれぞれの人の隣にいるんですね。
26句みんな違う場所で、違う風に当たっていた。そして、読むこちらの肌にも、それぞれの風がちゃんと届いた。それが、月締めお題のいちばんの醍醐味でした。
参加してくださったみなさん、本当にありがとうございました。6月のお題でも、みなさんの風景を楽しみにしています!