週末締めのお題**「衣替え」**が終わりました。6句の投稿、ありがとうございました! 俳句4・短歌1・自由詩1という内訳です。
このお題が開かれていたのは5月の終わり、冬物をしまって夏物を出す季節でした。そして今、ちょうど逆向きの衣替えの時期がやってきています。夏物をしまい、秋の支度をはじめる頃——読み返すのに、ぴったりのタイミングかもしれません。
6句を並べて感じたのは、衣替えでしまっているのは、服じゃなくて季節のほうだ、ということ。そして、しまう手はどこか名残惜しそうなんですよね。今回は4句をご紹介します。
①畳んで、はじめて気づく — 日常生活さんの俳句
冬物を / 畳みて気付く / 春の香り
3共感。日常生活さんの俳句。
まずは、衣替えのいちばん幸せな瞬間から。冬物のコートやセーターを畳んでいると、ふと春の香りがする。
いいのは、「畳みて気付く」という順番です。春が来たから衣替えをした——のではなく、衣替えをしている最中に、春がもう来ていたことに気づく。季節の移り変わりって、たいていこうやって後から気づくものですよね。カレンダーではなく、手を動かしているときに、鼻から入ってくる。生活のなかの発見を、そのまま十七音にした気持ちのいい一句です。
②月に透かせば、影も脱ぐ — 名無しの詠み人さんの俳句
古き衣 / 月に透かせば / 影も脱ぎ
3共感。名無しの詠み人さんの俳句。
こちらは、うっとりするほど美しい一句。
古びた衣を、月明かりに透かしてみる。すると——「影も脱ぎ」。着ていた自分の影までもが、するりと脱げていくような感覚。布が薄く透けることと、心の何かが軽くなることが、重なっているんですよね。
衣替えって、ただの家事のはずなのに、なぜか少しだけ心が整う作業でもあります。着なくなった服を手放すとき、その服を着ていた頃の自分も、そっと脱いでいる。**「影も脱ぎ」**の三文字が、それを言い当てています。
③また会おう、と言って — 名無しの詠み人さんの俳句
衣替え道は違えどまた会おう
3共感。同じく名無しの詠み人さんの一句。
これは、別れの挨拶みたいな衣替えです。定型に収めず、一息に言い切る形なのが効いていますよね。
「道は違えど また会おう」——ふつうなら、離ればなれになる人へ向ける言葉です。それを、しまう服に向かって言っている。夏物と冬物は、決して同じ季節に出会えない。半年後、こちらが出てくる頃には、あちらは箱の中。同じクローゼットにいながら、すれ違い続けるふたつの季節。
そう思うと、衣替えって、半年ぶりの再会と、半年間の別れが同時に起きている日なんですね。服に「また会おう」と声をかけるやさしさに、じんとしました。
④もう戻らない季節を、押し込める — 市井の詩人さんの自由詩
春の夜、オフィスのロッカーで/去年の厚手コートを畳む手が/ほんの少し、躊躇う/もう戻らない季節を/そっと奥へ押し込める
最後は、市井の詩人さんの自由詩。
締めは、この一篇しかありません。
場所は家ではなく、オフィスのロッカー。置きっぱなしにしていた去年の厚手コートを、ようやく畳んでしまおうとしている。ところが、その手が**「ほんの少し、躊躇う」**。
なぜ躊躇うのか。それは、しまおうとしているのが**コートではなく、「もう戻らない季節」**だからです。そのコートを着ていた冬に、何があったのか。楽しいことか、つらいことか。何も書かれていませんが、畳む手が止まったという事実だけで、十分に伝わってくる。
そして最後、「そっと奥へ押し込める」。捨てるのではなく、押し込める。なかったことにはしないけれど、いったん奥へ。——衣替えという何気ない作業が、過ぎた時間との折り合いのつけ方そのものになっている。共感数はまだ0ですが、このお題の答えみたいな一篇でした。
まとめ
畳んで気づく春(日常生活)/影も脱ぐ月夜(名無しの詠み人)/また会おうという挨拶(名無しの詠み人)/押し込める季節(市井の詩人)——6句から拾った、四つの衣替え。
紹介しきれませんでしたが、**「母の手で/たたまれし冬の衣を/仕舞いけり/春風に包まれて行く/日々の優しさよ」という短歌、「母の手やさし/たたみ直す春の衣/朝日に香る」という一句もありました。どちらも「母の手」**が出てくるのが印象的で、衣替えは、誰かの手で支えられてきた家事でもあるんですね。
さて、いまはちょうど、夏物をしまう季節です。半年ぶりに秋物を出しながら、去年の自分に「また会おう」と言うことになるのかもしれません。
参加してくださったみなさん、ありがとうございました。今年の夏は、どんな服と過ごしましたか? よかったら、コメントで教えてください。