週末締めのお題**「読書の秋」**が終わりました。19句の投稿、ありがとうございました! 自由詩6・俳句5・短歌5・川柳3という内訳です。
「読書の秋」というと、しっとり本を読みふける季節——のはずですよね。ところが19句を並べてみると、誰も本を読み終えていないんです(笑)。三ページで寝落ち、栞は同じ場所、夜中に落ちた栞。そしてもうひとつ、本の中に、人を探している句が並びました。今回は5句をご紹介します。
①カムパネルラと、戻らぬ日 — MaYoさんの俳句
星月夜 / カムパネルラと / 戻らぬ日
6共感。MaYoさんの俳句。
まずは、読書の記憶そのものを詠んだ一句から。
カムパネルラ——『銀河鉄道の夜』で、ジョバンニと旅をした少年ですね。星月夜を見上げながら、あの本を読んだ日のことを思い出している。そして**「戻らぬ日」**。
この五文字が、二重に効いているんですよね。ひとつは、カムパネルラ自身が帰らぬ人になったこと。物語の結末を知っている人には、これだけで胸が痛む。もうひとつは、その本を夢中で読んでいた自分の日々も、もう戻らないということ。物語の喪失と、読者の時間の喪失が、ひとつの言葉で重なる。秋の星空の下で、ふたつの「戻らぬ日」を思う。静かで深い一句でした。
②三ページで、寝落ち — ほろ酔いさんの川柳
本を開く / 三ページで寝落ちして / 朝を迎え
6共感。ほろ酔いさんの川柳。
そして、読書の秋の現実がこちら(笑)。
意気込んで本を開く。ところが三ページで撃沈。気づけば朝。——これ、身に覚えのある方が多いのではないでしょうか。
面白いのは、ほろ酔いさんがこのお題に**「三ページ」の句を三つも寄せていることなんです。「秋の夜、本を開いて三ページで寝落ち/栞は挟んだままだけど/もう内容忘れてる/——人生も同じだな、なんて/酔っぱらいは簡単に悟った気になるんだよ」、そして「朝日差す中で昨夜の本を開く/三ページ進んだと思ったら/栞は同じ場所だった」**。
三ページから、どうしても先に進めない(笑)。しかも本人がいちばんそれを面白がっている。読書の秋の理想と現実を、ここまで正直に差し出してくれる書き手は貴重です。
③姫に恋、魔王を倒し、本を閉じ — なごみRさんの俳句
姫に恋 / 魔王を倒し / 本を閉じ
7共感。なごみRさんの俳句。
これは、構成が見事な一句です。
「姫に恋」「魔王を倒し」——ここまでで、壮大な物語がまるごと一冊分語られてしまう。出会いがあり、冒険があり、勝利がある。ところが最後、「本を閉じ」。
ぱたん、と現実に戻ってくるんですよね。あれだけの大冒険が、本を閉じた瞬間に終わる。しかも三つの動作が、すべて**連用形(恋し/倒し/閉じ)**で並んでいるので、とんとんとん、とテンポよく進んで、最後にすとんと落ちる。
読書って、まさにこれだと思うんです。数時間、まったく別の人生を生きて、そして本を閉じれば自分に戻る。その切り替えの鮮やかさと、ほんの少しのさみしさを、十七音で見せてくれました。
④君の名の、文字だけ追いて — 若き夢見人さんの短歌
秋雨の / 窓辺に開く / 君の名の / 文字だけ追いて / 頬が熱くなる
7共感。若き夢見人さんの短歌。
ここで、本の中に人を探す句が出てきます。
秋雨の窓辺で本を開く。ところが、内容は頭に入ってこない。目が追ってしまうのは、「君の名」と同じ文字だけ。——誰かを好きになると、その人の名前の一字が、どこにでも見えてしまうんですよね。新聞でも、看板でも、本のページでも。
そして**「頬が熱くなる」**。本を読んでいるだけなのに、勝手に恥ずかしくなっている。誰にも知られていない、ひとりぶんの恋。秋雨の音と、窓辺の静けさと、熱くなる頬。この対比が、うつくしい一首でした。
同じくMaYoさんも、**「貸出カードに/君の名を探す」**という一篇を寄せています。図書館の貸出カードに残った名前を探す——こちらも、本の中に人を探す句ですね。
⑤誰もが、同じページで — 市井の詩人さんの自由詩
終電の車両で/背表紙が光る/誰もが同じページで/眠っている
最後は、市井の詩人さんの自由詩。8共感。
締めは、この鮮やかな一篇で。
終電の車両。開いたままの本の背表紙が光っている。そして——「誰もが同じページで/眠っている」。
この結びが、素晴らしいんですよね。みんなが読みかけのまま寝落ちしている。もちろん、物理的に全員が同じページのはずはありません。でも**「同じページで眠っている」**と言われると、疲れ果てた乗客たちが、どこか同じ場所でそろって力尽きたように見えてくる。
②のほろ酔いさんがひとりで三ページで寝落ちしていたのに対して、こちらは終電の車両ぜんぶが寝落ちしている。読み切れないのは、自分だけじゃなかった。19句を締めくくるのに、これ以上あたたかい一篇はありません。
まとめ
カムパネルラと戻らぬ日(MaYo)/三ページで寝落ち(ほろ酔い)/本を閉じて現実へ(なごみR)/君の名の文字だけ追う(若き夢見人)/同じページで眠る終電(市井)——19句から拾った、五つの読書の秋。
ほかにも、「本の栞/夜中に落ちて/朝になる」(うたまるさん)——栞が落ちたということは、開いたまま眠ってしまったわけですね(笑)。「古本の/匂い懐かし/秋の夜」(なごみRさん)、「朝日さす/縁側に開く/古い本」(気ままにさん)という、匂いと光の句も並びました。
読み切れなくても、三ページでも、栞が落ちても。本を開こうとした夜があっただけで、じゅうぶん読書の秋なのかもしれません。
参加してくださったみなさん、ありがとうございました。あなたの枕元には、読みかけの本が何冊ありますか? よかったら、コメントで教えてください。