お題 — チャレンジ
鍵、靴、時計、傘……身の回りの物になりきって、その「声」を詠んでみましょう。物の視点から見える世界とは?
2026/8/1 12:00 〜 10/31 11:59
朝日さす 窓辺の猫が 伸びをして カーテンの揺れ 小さき喜び
駅前の喫茶店 朝日が鳴らす スプーンの音 淡く響きて 秋風吹き抜く
波音の 奥底より聞こゆ鐘かな 防波堤 錆びた鎖さへ秋風に鳴る
秋朝の 図書館で聞く ページめくる 指の爪音 本が囁く声
秋の駅舎の ベンチの軋みが 駅弁の箱の ほどけ音とひとつ 帰路を急かせる
マグカップ 底に残った珈琲が 冷めてゆくまで デスクの隅で ちいさく呟いている
秋の夜半 柿の実落つる音かな 静寂の中 ひとつひとつの 物言わぬ訴え聞く
ふたりだけ ベッドの上で 見つめ合い 気まずく思う 電子計算機
秋の朝 古き土瓶の 湯の音も 主を思いて 静かに歌う
古本の背を 指でなぞれば秋陽が ページの間から 呼びかけてくる声あり 誰が引きし線
秋の朝 古い木の戸は そっと鳴きて 住み手の心 映し出しけり
秋の暮れ 柿の枝鳴る 月涼し 物言はぬ世も 声満ちにけり
秋の夜の カリカリの音に 起き上がり 膝を立てたる 我が子の催促
秋朝(あきあした)の 露玉ひとつ 木の葉より こぼるる音の 静寂(せじゃく)かな
夜中にね 猫の鈴音が そっと鳴る 暗い廊下を 君は歩いてる
秋日差す デスク上の コーヒー冷め カップの底で 氷が鳴った
秋の日に 消しゴムが言う 「もう限界」 使われすぎて 丸くなった身で
洗濯機の 回る音まで 子守唄 夜中に一人 コップが語りかける
駅弁の 蓋をはずせば プラスチック わずかに鳴く 北上線の昼
昼の蝉の声 君の名前呼ぶように 窓に響きて 僕は耳塞ぐ その音が好きだから