週末締めのお題**「お盆の頃」**が終わりました。10句の投稿、ありがとうございました! 俳句5・川柳2・自由詩2・短歌1という内訳です。
お盆は、帰ってくる季節です。故郷へ帰る人。あちらから帰ってくる人。10句を並べてみると、帰ってくるのは、それだけじゃなかった——古い手紙、忘れていた記憶、そして毎年おなじみのあの風習まで。この時期だけ、いろんなものが戻ってくる。今回はそこから、5句をご紹介します。
①梨の香が、暑さをほどく — 咲さんの俳句
梨の香や / ほてり解きつ / 日は暮れつ
9共感。特集初登場、咲さんの俳句。
まずは、季節の変わり目をとらえた一句から。お盆のころ、店先に梨が並びはじめますよね。その、みずみずしい香り。
うまいのは、「ほてり解きつ」です。梨を食べて涼しくなった、ではない。香りだけで、体のほてりがほどけていく。そして「日は暮れつ」——「〜つ/〜つ」と重ねることで、ほてりがほどけるのと、日が暮れていくのが、同時にゆっくり進行するんですよね。夏のいちばん暑い盛りが過ぎて、秋の気配がそっと入りこんでくる、あの数日間。お盆という時期の空気の質そのものを詠んだ、品のいい一句でした。咲さん、素敵なデビュー句をありがとうございます。
②胡瓜と茄子が、馬になる — なごみRさんの俳句
盆の入り / 胡瓜や茄子の / お馬乗り
7共感。なごみRさんの俳句。
こちらは、お盆の風習そのものを詠んだ一句。胡瓜と茄子に割り箸を刺して作る、精霊馬(しょうりょううま)。ご先祖さまが、行きは足の速い胡瓜の馬で早く帰ってきて、帰りは足の遅い茄子の牛でゆっくり戻る——という、あの飾りです。
「お馬乗り」という言い方が、なんとも微笑ましいんですよね。ご先祖さまが、野菜の馬にちょこんとまたがっている姿が浮かんでくる。しめやかな行事のはずなのに、どこかかわいらしくて、あたたかい。日本の夏がずっと繰り返してきた光景が、十七音にすっぽり収まっています。
③帰省で、いちばん迷惑なのは — MaYoさんの川柳
孫連れて / 帰省に猫は / 隠れけり
5共感。MaYoさんの川柳。
ここで、思わず笑ってしまう一句を(笑)。
孫を連れて、実家に帰省する。おじいちゃんおばあちゃんは大喜び、家じゅうが賑やかになる——その陰で、猫だけが隠れている。静かな暮らしを乱された猫にとって、帰省は年に一度の大迷惑なんですよね。押し入れの奥か、ベッドの下か。人間たちが盛り上がっているあいだ、じっと息をひそめている。
にぎやかさを、猫の側から見返したこの視点が、絶妙です。帰ってくる人がいれば、隠れる者もいる。お盆の家の、いちばん正直な報告でした(笑)。
④誰も、故郷を見ていない — 市井の詩人さんの自由詩
帰省ラッシュの駅で / スマホを握りしめたまま / 誰も故郷を見ていない
3共感。市井の詩人さんの自由詩。
一転して、現代の帰省を切り取った一篇。
帰省ラッシュの駅。みんな、故郷へ帰るために集まっている。それなのに、誰もが手元のスマホを握りしめて、うつむいている。故郷へ向かいながら、誰も故郷を見ていない。——この矛盾の指摘が、するどいんですよね。
体は移動している。でも、心は画面の中にある。せっかく窓の外を、なつかしい山や田んぼが流れているのに、誰も顔を上げない。責めているわけではなく、ただ静かに事実を置いているのが、かえって効きます。私たちの帰省は、いつからこうなったんだろう——と、少しどきりとさせられる一篇でした。
⑤本棚の奥から、帰省する — 名無しの詠み人さんの短歌
盆の夜 栞に挟まり / 古き手紙 / 誰かの線引き 薄れたるまま / 本棚の奥より 帰省人
最後は、名無しの詠み人さんの短歌。4共感。
締めは、この特集のタイトルそのものの一首を。
盆の夜、古い本を開いたら、栞のかわりに手紙が挟まっていた。ページには、誰かが引いた線が、薄くなって残っている。その手紙も、線を引いた誰かも、もうずっと忘れていたものです。
そして最後の一語——「帰省人」。本棚の奥から帰ってきた人。お盆に帰ってくるのは、生きている家族と、ご先祖さまだけじゃない。忘れていた手紙も、その字を書いた人の面影も、この夜に帰ってくるんですよね。紙の中から、そっと里帰りしてくるものがある。しずかで、少し怖くて、とても美しい一首でした。
まとめ
梨の香(咲)/精霊馬(なごみR)/隠れる猫(MaYo)/スマホを見る帰省客(市井)/本棚から帰る手紙(名無しの詠み人)——10句から拾った、五つのお盆。
ほかにも、「むら雨に/灯りともって/迎え盆」(なごみRさん)の情感、「盆月夜/帰らぬ人へ/灯をともす」という静かな祈り、「帰省ラッシュ/窓辺の鉢が/水を待つ」という留守宅の視点、そして「帰省ラッシュの渋滞で/スマホゲームのレベルが上がり/実家の親より強くなる息子」(笑)まで。そして先週の秀句ピックアップでご紹介したMaYoさんの**「高鼾|たかいびき|/一升瓶と/盆の月」**も、このお題から生まれた一句でした。
10句という数ながら、にぎやかさと、しめやかさが、きれいに同居していたのが今回の魅力です。参加してくださったみなさん、ありがとうございました。あなたのお盆には、何が帰ってきましたか? よかったら、コメントで教えてください。