seasonal**「サッカーW杯」**が終わりました。32句の投稿、ありがとうございました! お題としては締め切りましたが、大会そのものは、いままさに熱戦のさなか。この記事を読んでいる今夜も、どこかでボールが転がっているはずです。
32句を並べて、いちばん面白かったのは——誰もスタジアムにはいないこと(笑)。みんなが詠んだW杯は、遠い国の芝生の上じゃなくて、オフィスの昼休み、早朝の茶の間、夜更けの窓。W杯が、日本の日常のすみずみまで染み込んでいた——そんな32句でした。
今回はその「浸透ぶり」に沿って、5句ご紹介します。
①試合の熱、そのもの — 通りすがりの凡人さんの川柳
諦めぬ 心が呼んだ 同点弾
9共感でトップクラス。通りすがりの凡人さんの川柳。
まずは、ど真ん中の熱から。
「同点弾」——サッカーを見る人なら、この一語だけであの瞬間の総毛立ちがよみがえりますよね。負けている。時間がない。もうダメかもしれない。それでも選手が、そして応援する自分が、**「まだ諦めない」と思い続けた、その先に飛び込んでくるゴール。「心が呼んだ」**という言い方がいいんです。あのゴールは、偶然じゃない。諦めなかった全員の気持ちが、引き寄せたんだ——そう言い切る強さに、しびれました。
②昼休みのオフィスで — 市井の詩人さんの川柳
昼休みの / オフィスは熱く / ボール蹴る
8共感。市井の詩人さんの川柳。
ここから、「W杯が生活に染み出す」シリーズの始まりです。
面白いのが、これ、テレビで観ている句じゃないんですよね。W杯に感化された大人たちが、昼休みのオフィスで、自分たちでボールを蹴っている。ネクタイをゆるめて、革靴で。**「オフィスは熱く」**の熱は、冷房の効いた部屋の温度じゃなくて、うずうずした気持ちの温度です。世界の熱狂が、こんな小さな昼休みまで飛び火してくる。そのおかしさと微笑ましさが、きゅっと詰まっています。
③夜更けの窓で、世界とつながる — 気ままにさんの短歌
遠き国 / 夜更けの窓に / 灯をともす / ひとつの球を / 追う星たちよ
5共感。気ままにさんの短歌。
さっきまでの賑やかさから一転、こちらはしんと美しい一首です。
時差のある**「遠き国」の試合を、夜更けの窓に灯をともして観ている。眠い目をこすりながら、たったひとつの球を追いかける。そして最後、「追う星たちよ」**。これ、フィールドで球を追う選手たちのことでもあり、夜空の星のことでもあり、同じ夜に世界中で画面を見つめている人々のことでもあるんですよね。ひとつの球が、遠い国と、この窓辺と、無数の眠らない人たちを、一本の光でつなぐ。W杯の、いちばん大きな景色を詠んでくれました。
④季語とW杯の、意外な同居 — なごみRさんの俳句
目に青葉 / ワールドカップ / ポップコーン
6共感。なごみRさんの俳句。
これは、取り合わせの妙にやられました。
「目に青葉」——初夏の、あの有名な季語ですよね。そこに、「ワールドカップ」というカタカナの現代語、さらに「ポップコーン」。季語×世界大会×おやつ。まったく釣り合わないはずの三つが、五・七・五に並ぶと、なぜか初夏のうきうきした空気でひとつにまとまる。俳句って、こんなに自由でいいんだ、と楽しくなる一句です。青葉を眺めながら、ポップコーン片手にキックオフを待つ——最高の初夏じゃないですか。
⑤新しい声から、渋い一句 — いるかver.2さんの俳句
梅雨空や / 勝ち点一を / 追いついて
最後は、最近たくさん投稿してくださっているいるかver.2さんの俳句。5共感。
締めに、通好みの一句を置かせてください。
派手なゴールでも、劇的な勝利でもない。「勝ち点一を/追いついて」——これ、引き分けなんですよね。負けていた試合に、終盤やっと追いついて、勝ち点を1だけもぎ取った。勝ちきれなかった、でも負けもしなかった。そのすっきりしない、でも確かに前に進んだ手ごたえを、**「梅雨空」**の晴れない空に重ねている。勝ち負けの派手さじゃなく、勝ち点1の重みを詠む——サッカーを本当によく見ている人の一句だなあ、と唸りました。
まとめ
試合の熱(通りすがり)/オフィス(市井)/夜更けの窓(気ままに)/初夏の季語(なごみR)/勝ち点1(いるか)——32句から拾った、五つのW杯。
ほかにも、孫と朝日のなかでゴールを見る句や、**「子が寝たらハイライト見て夜更かし妻」なんていう子育て世帯のリアル、そして川石のりたけさんの「あれから四年/光る舞台へ」**という、四年越しの想いを込めた一首もありました。どれも、スタジアムじゃなく、それぞれの暮らしの真ん中から詠まれているのが、今回の宝物でした。
大会は、まだ続いています。参加してくださったみなさん、ありがとうございました。あなたの夏は、どの試合、どのゴールで沸きましたか? 続きは、ぜひ次の一句で。