weekly**「蛙の声」**が終わりました。12句の投稿、ありがとうございました!
並べてみて、ふふっとなりました。だって、みんなの蛙、ぜんぜん風流じゃないんです(笑)。田んぼでのどかに鳴いている……というより、こっちの生活にぐいぐい割り込んでくる蛙ばかり。目を覚まさせたり、愚痴をかき消したり、なりきってみたり。「声」という、いちばん生活に入り込んでくるお題ならではの、にぎやかな12句でした。
今回は、**蛙の声との"つきあい方"**に注目して、5句ご紹介します。
①蛙になりきる — 万次郎さんの俳句
古池に / 飛び込み二年 / 蛙です
11共感でトップ。万次郎さんの俳句。
これ、わかった瞬間に声が出ました。
「古池や 蛙飛びこむ 水の音」——あの芭蕉の、いちばん有名な一句。あの池に飛び込んだ蛙が、**「飛び込んで二年になります、蛙です」**って、自己紹介してきたんです。
名句の"その後"を、当の蛙の視点から、しれっと続けてみせた。**「二年」**という妙にリアルな年季が、たまらなくおかしいんですよね。新人さんが「入社二年目です」と挨拶するみたいな律儀さ。お題の蛙を、いきなり主役に立たせてしまうこの遊び心、大好きです。
②大合唱で起こされる — 日常生活さんの川柳
夜明け前 / 蛙の大合唱で / 目が覚める
6共感。日常生活さんの川柳。
ここから、「蛙にこっちの生活を邪魔される」シリーズの幕開けです(笑)。
「大合唱」——もう、この一語で全部伝わりますよね。一匹じゃない。何十匹、何百匹が、夜明け前のいちばん眠いところを狙ったみたいに、いっせいに鳴く。目覚まし時計より早く、容赦なく起こされる。田んぼの近くに住んだことのある人なら、**「わかる……」**と苦笑いするはずです。
でも不思議と、怒っている感じはしないんですよね。**「やれやれ」**くらいの、季節へのあきらめと親しみ。夏が来たなあ、という体感が、この大合唱には詰まっています。
③愚痴をかき消す — うたまるさんの川柳
蛙鳴く / 妻の愚痴まで / 聞こえない
5共感。うたまるさんの川柳。
②では迷惑だった蛙の声が、こちらではまさかの救世主になります(笑)。
蛙が大きな声で鳴いてくれるおかげで、妻の愚痴が聞こえない。これ、聞こえないんじゃなくて、「聞こえないことにしている」ですよね。蛙のせいにして、ちょっと耳を休ませている。そのしれっとした他力本願がおかしくて、でもどこか平和です。
うたまるさんはいつも、夫婦の景色をあたたかい笑いに変えるのが本当にうまい。蛙の声が、家庭にそっと防音壁を立ててくれる——なんとも罪のない一句です。
④声じゃなく、姿の蛙 — なごみRさんの俳句
薬局の / カエルケロコロ / 癒しなり
5共感。なごみRさんの俳句。
ここでお題が、くるっと視点を変えます。
「蛙の声」と言われたら、ふつうは鳴き声を思い浮かべますよね。でもなごみRさんが見たのは、薬局の店先に置かれた、あのカエルの置物。**「ケロコロ」**という音のかわいらしさだけで、もう頬がゆるみます。
本物の蛙の声に起こされたり、かき消されたりしている句が並ぶなかで、この句だけぴくりとも鳴かない蛙。それでも、見ているだけで**「癒しなり」**。お題を、別の角度からそっとつまみ上げる——この発想の転換が気持ちいいんですよね。
⑤蛙を聞く猫を、見る — 名無しの詠み人さんの自由詩
蛙の声に / 耳澄ます猫の顔 / 窓越しに見つめるその真摯さよ
最後は名無しの詠み人さんの自由詩。1共感ですが、これは置いておきたい一篇でした。
ここまでの句が**「人が蛙の声をどう聞くか」だったのに対して、この句にはもうひとり、聞き手がいます**。猫です。
窓の外の蛙の声に、じっと耳を澄ませている猫。その横顔を、人がそっと見つめている。蛙→猫→人、と眼差しが三段に重なっているんですよね。**「真摯さよ」**の詠嘆がいい。たかが蛙の声に、こんなに真剣になれる猫。その姿に見入ってしまう自分。声ひとつが、家のなかに静かな時間をつくる——にぎやかな今回のお題のなかで、ふっと息をつける一句でした。
まとめ
なりきる(万次郎)/起こされる(日常生活)/救われる(うたまる)/姿を愛でる(なごみR)/猫ごしに聞く(名無し)——12句から拾った、五つの「蛙の声」とのつきあい方。
今回いちばん面白かったのは、「蛙の声=風流なもの」と詠んだ句が、ほとんどなかったこと。みんなにとって蛙の声は、**目覚めや、会話や、暮らしのなかに、ずかずか入り込んでくる「生活音」**だったんですよね。だからこそ、笑いがあって、生活の手ざわりがあって、いとおしい。ちなみに今回は、ビデオ会議に蛙の声が漏れる句(名無しの詠み人さん)なんていう、令和ど真ん中の一句もありました。
参加してくださったみなさん、ありがとうございました。あなたの夏は、どんな蛙の声で始まりましたか? 次の一句で、ぜひ聞かせてください。