6月から8月まで、三か月にわたって開いていたお題**「窓の外」**が終わりました。127句——これまでで最大の投稿数です。本当にありがとうございました! 川柳38・俳句33・自由詩33・短歌23と、四つのジャンルが見事にばらけました。
127句を読み通して、はっとしたことがあります。「窓の外」というお題なのに、みなさんが詠んだのは、必ずしも"外"ではなかったんです。窓ガラスに映った子の寝顔、スマホを消した瞬間に現れる自分の顔、そして——窓を見ていない人たち。
窓って、外を見るための穴であると同時に、映す鏡でもあり、内と外を隔てるガラスでもあるんですよね。今回はそこから、6句をご紹介します。
①窓辺の鉢が、ほころぶ — 気ままにさんの俳句
朝日さす / 窓辺の鉢の / 花ほころぶ
11共感。気ままにさんの俳句。
まずは、いちばん素直な「窓辺」から。朝日が差し込む窓辺。そこに置いた鉢植えの花が、ちょうどほころんだところ。
**「ほころぶ」という言葉が、やわらかくていいんですよね。「咲く」でも「開く」でもなく、ほころぶ。布の縫い目がゆるむように、そっと開いていく。しかも、この花は窓の外ではなく、窓辺(内側)**にあります。外の光が中に届いて、中の花が開く。窓は、光を通す場所——そのいちばんやさしい役割から、この特集を始めさせてください。
②置き配の背に、信楽たぬき — MaYoさんの俳句
置き配を / 背に信楽 / たぬきかな
8共感。MaYoさんの俳句。
続いては、窓の外に見えたおかしな景色です。
玄関先に置かれた置き配の段ボール。その背後に、信楽焼のたぬきが立っている。——令和の宅配と、昭和の縁起物が、同じ画角に収まっているんですよね。たぬきは何も言わず、ただ荷物の後ろで見守っている。まるで留守番を任された番人みたいに。
窓からふと外を見たときの、この妙な取り合わせのおかしみ。新しいものと古いものが同居する日本の玄関先が、十七音でぴたりと切り取られています。思わずにやりとしてしまう一句です。
③窓に映る、子の寝顔 — 日常生活さんの俳句
夜涼し / 窓に映りし / 子の寝顔
11共感。日常生活さんの俳句。
さて、ここから窓の性質が変わります。
夜、外が暗くなると、窓は鏡になるんですよね。外を見ようとしたのに、映るのは室内の景色。そして、そこに映っていたのは——眠っている子どもの顔。
外を見ようとして、いちばん大事なものが見えたわけです。しかも「見た」ではなく**「映りし」。自分から覗き込んだのではなく、ふと目を上げたら、そこにあった。「夜涼し」**の季語がまた効いていて、暑さがようやく引いた夜の、しんとした空気まで伝わってきます。窓は、外を見せるだけでなく、内側をそっと映し返す——このお題の核心に触れる一句でした。
④こっちには来ない — うたまるさんの短歌
朝日さす / 窓枠の中の / セミの声 / 遠くで鳴いてる / こっちには来ない
5共感。うたまるさんの短歌。
そして、窓の"隔てる"性質を詠んだのがこちら。
「窓枠の中の」という言い方がすごいんですよね。窓枠は、外の景色を一枚の絵のように切り取る。その額縁の中で、蝉が鳴いている。でも、その声は**「遠くで鳴いてる」**——ガラス越しだから、くぐもって届く。
そして結び、「こっちには来ない」。——これ、蝉の話だけじゃないですよね。外の世界の音も、熱も、にぎやかさも、ガラス一枚のこちら側には入ってこない。エアコンの効いた部屋の中で、夏を「見ている」だけの自分。窓は、世界を見せながら、同時に自分を世界から切り離している。127句のなかで、いちばん静かに刺さった一首でした。
⑤窓から、窓を見る — 市井の詩人さんの自由詩
朝日が反射したビルの窓から/同じように朝日に照らされた/隣のビルの窓を見つめるサラリーマン
7共感。市井の詩人さんの自由詩。
こちらは、窓が増殖していく一篇です。
オフィスビルの窓。そこから見えるのは、空でも木々でもなく、隣のビルの窓。しかも、そのどちらにも同じ朝日が当たっている。窓の向こうに、また窓がある。
都会で働いていると、窓から見えるのは自然ではなく、誰かの職場なんですよね。そして向こうの窓の中にも、こちらを見ているかもしれない誰かがいる。同じ光を浴びて、同じように働いている見知らぬ人。市井さんはこのお題に、**「昼休みの窓辺/誰もが同じ角度で空を見上げる/その退屈さが、ちょっと好きだ」「朝日が映した隣のビル/誰かのデスクがもう明るい/俺はまだコーヒーの湯気の中」**と、オフィスの窓の連作を何篇も寄せてくださいました。どれも「誰もが同じ」という視線でつながっているのが印象的です。
⑥スマホを消したら、自分がいた — うたまるさんの川柳
スマホ消す / 窓に映った / 自分かな
最後は、うたまるさんの川柳。9共感。
締めは、この一句しかありません。
電車の中でしょうか。スマホを見ていて、ふと画面を消す。真っ暗になった画面——ではなく、その向こうの窓ガラスに、自分の顔が映っていた。
画面が消えて、はじめて世界が見えるんですよね。しかも、最初に目に入るのは外の景色ではなく、自分自身。実は今回、「スマホと窓」を詠んだ句がとても多くて、「スマホ光/隣の人も/窓見てない」「朝日さす/スマホ手放せず/窓も見ず」——窓の外には、誰も目を向けていないという句が並びました。
私たちは、窓のそばにいながら、手のひらのほうを見ている。そして画面を消したとき、窓は外ではなく、自分を見せてくる。「窓の外」というお題が、最後に自分の顔にたどり着いてしまう——127句を締めくくるのに、これ以上ふさわしい一句はありませんでした。
まとめ
ほころぶ鉢の花(気ままに)/置き配とたぬき(MaYo)/窓に映る子の寝顔(日常生活)/こっちには来ない蝉の声(うたまる)/隣のビルの窓(市井)/窓に映った自分(うたまる)——127句から拾った、六つの窓。
紹介しきれなかった句が、まだ百以上あります。「朝日が窓を叩く/…/誰もが同じ光を浴びているのに/なぜ私だけ/夜のままなのだろう」という切実な一篇、「夜中に窓を開けば/SNSの灯が/隣の部屋の窓をも照らしている」という現代の夜景、「窓の外/蝉の声だけ/大きくて/自分の心音/聞こえなくなる夏」(うたまるさん)、「朝日差す/洗濯物が/手を振って」(日常生活さん)——そして、川石のりたけさんの**「窓の外/テイクオフした/僕の服」**は、127句の最多共感を集めた一句でした。
外を見せ、内を映し、世界と自分を隔てる。**窓は、こんなにいろいろな顔を持っていた。**三か月で127句、その全部が、それぞれの窓辺から生まれたものです。
長いあいだお付き合いくださったみなさん、本当にありがとうございました。あなたの窓の外には、いま何が見えていますか? ——それとも、ガラスに映った自分でしょうか。よかったら、コメントで教えてください。